Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十五

       題しらず 読人知らず  
755   
   うきめのみ  おひて流るる  浦なれば  かりにのみこそ  海人は寄るらめ
          
     
  • うきめ ・・・ 浮いている海草 (浮き布)
  • おひて ・・・ 生育して (生ひて)
  • 浦 ・・・ 入り江・海辺
  
「うきめ」ばかりが生えて流れる海辺なので、一時的にだけ海人は立ち寄るのでしょう、という歌。 
"うきめ" に 「浮き布−憂き目」、 "かり" に 「狩り(刈り)−仮」を掛けて、自分を "浦" に、相手を
 "海人" に譬えている。 "流るる" にも 「泣かるる」を掛けていると解釈されることもある。

  「みるめ (海松布−見る目)」と 「うきめ (浮き布−憂き目)」は似たような言葉なのでまぎらわしい。 「みるめ」が使われている歌の一覧は 669番の歌のページを参照。「うきめ」という言葉が使われている歌には、他に次のようなものがあるが、このうちこの歌と同じく 「浮き布」に掛けられているのは三番目の 973番の歌のみである。

 
77   
   いざ桜  我も散りなむ  ひとさかり  ありなば人に  うきめ 見えなむ
     
955   
   世の うきめ   見えぬ山ぢへ  入らむには  思ふ人こそ  ほだしなりけれ
     
973   
   我を君  難波の浦に  ありしかば  うきめ をみつの  海人となりにき
     
       「うきめ」という言葉を使った歌をもう一度まとめておくと次のようになる。

 
     
77番    ありなば人に  うきめ見えなむ  承均法師
755番    うきめのみ  おひて流るる 浦なれば  読人知らず
955番    世のうきめ  見えぬ山ぢへ 入らむには  物部吉名
973番    うきめをみつの  海人となりにき  読人知らず


 
( 2001/08/07 )   
(改 2004/02/06 )   
 
前歌    戻る    次歌