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この歌は直前の業平の歌に対する返しであり、歌の意味は、あなたがいらっしゃらなくなってここが荒れた野となるのなら、私はウズラになって泣き悲しんで年を過ごしましょう、そうすれば狩りのついでに仮にでも、あなたがいらっしゃらないことはないでしょうから、ということ。 "うづら" に憂(ウ)辛(ツラ)を詠みこみ、 "かり" には「狩り−仮」を掛けている。
「野とやなりなむ」を受けて "野とならば" と詠い出し、「年をへて」を受けて "年はへむ" とはめ込んでいる。 "年はへむ" の「経(ふ)」という動詞を使った歌の一覧は 596番の歌のページを参照。元の業平の歌とこの歌の最後の部分を比較してみると、
- (元歌) なりなむ ・・・ なり(なるの連用形)+な(ぬの未然形)+む(推量の助動詞)
- (返し) こざらむ ・・・ こ(くの未然形)+ざら(ずの未然形)+む(推量の助動詞)
と、推量を推量で返している形になる。業平側の「野となるだろう」という推量の度合強まれば強まるほど、「だにやは+こざらむ」の反語の程度も強まるような感じでもある。 「やは」を使った歌の一覧については 106番の歌のページを参照。 「だに」という言葉を使った歌の一覧については 48番の歌のページを参照。次の読人知らずの歌は、推量の 「む」がなく、補助動詞「まし」という尊敬のニュアンスがある点でこの歌の "こざらむ" とは異なるが、やはりそちらの方が優しい感じがする。
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