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       題しらず 紀友則  
787   
   秋風は  身をわけてしも  吹かなくに  人の心の  空になるらむ
          
     
  • 身をわけて ・・・ 体を二つに分けて
  
秋風は体を分けて吹くものでもないのに、どうしてあなたの心は空しくなってしまったのでしょう、という歌。

  "身をわけて " という部分がわかりづらいが、 373番の伊香子淳行(いかごのあつゆき)の「思へども  身をしわけねば」という離別歌からの類推からすると、分身を作り出すというようなイメージであると思われる。自分だけに向けられていたはずの相手の心と体が、最近はどうも様子がおかしい、身が分かれて本体はよその人の元へ行っているような感じである、という状況か。

  この歌での 「身」と 「心」は相手の心身で、友則が女性の立場で詠っている歌のように見える。 
「らむ」と理由を推測す助動詞で結ばれているが、答えは 「秋−飽き」という駄洒落の中に、すでに出ているという歌である。  「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを、「人の心」という言葉を使った歌の一覧については 651番の歌のページを参照。

  また、逆接の 「なくに」については 19番の歌のページを、恋歌で 「空」が使われている歌の一覧については 481番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/25 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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