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初雁の声を遠くかすかに聞いたあの秋のはじめから、ただ上の空で物思いにふけっています、という歌。内容的には 「聞きし声」は恋の相手の声であって 「雁」の声ではないが、 "初雁" で「はつか」を導き、雁のイメージを "中空" につなげ、かつ 「初」によって 「初めて聞いた」ということを表わしているように、この歌での "初雁の" という言葉の役割はかなり大きい。
最後の句を 「物思ふかな」という字余りにしない伝本もあるようである。どちらがいいかという判断はむずかしいが、気にしてみると 「を」があると少し "思ふかな" の部分に、のっぺりとした重さを感じるような気もする。 "はつかに" という言葉を使った他の歌としては、478番の忠岑の「草のはつかに 見えし君はも」という歌と、1048番の平中興(なかき)の「あふことの 今ははつかに なりぬれば」という歌がある。ちなみにこの躬恒の歌では、中興の歌のように 「はつか」に 「二十日」は掛けているわけではないようである。
また、この歌のように恋歌の中で度々 「空」という言葉が出てくるが、どうも意味が抽象的でわかりづらいような気がする。恋歌での 「空」の一覧をあげてみると次の通り。
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