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       心地そこなへりけるころ、あひ知りて侍りける人のとはで、心地おこたりてのち、とぶらへりければ、よみてつかはしける 兵衛  
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   死出の山  麓を見てぞ  かへりにし  つらき人より  まづ越えじとて
          
     
  • 死出の山 ・・・ 冥土に行く途中にあるとされる山
  詞書の意味は 「病をして具合が悪かった時、親しい仲であった人が見舞いにも来ず、治ってから見舞いをよこしたので詠んで送った」歌ということ。兵衛は藤原忠房の妻とされるので、この相手は忠房であったのかもしれない。

  歌の意味は、
死出の山の麓を見て引き返してきました、冷たいあなたより先には越えまいとして、ということ。詞書どおりの状況での皮肉な歌であるが、死の淵から帰って来た歌なので哀傷歌ではなく、恋歌五に置かれている。

  「つらき」という言葉からは、434番の「我がつらきにや 思ひなされむ」という読人知らずの物名の歌が思い出される。 「つらし/つらき」という言葉を使った歌の一覧は 624番の歌のページを、 「つれもなき人/つれなき人」を詠った歌の一覧については 486番の歌のページを参照。

  また、"死出の山" という言葉の響きは、言葉の意味とも歌の内容とも関係ないが、「しほの山 
さしでの磯に 住む千鳥」という 345番の読人知らずの歌を思い起こさせる。

 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/01/20 )   
 
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