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       題しらず 凡河内躬恒  
794   
   吉野川  よしや人こそ  つらからめ  はやく言ひてし  ことは忘れじ
          
     
  • よしや ・・・ たとえ
  
たとえあの人が冷たい態度をとろうとも、以前の言葉は忘れません、という歌。ざっと見ると、はじめの 「吉野川」というのは "よしや" を導くだけの働きのように見えるが、 "はやく" という言葉に、吉野川の流れが早いことと 「以前に」という意味を掛けている。

  「はやく言ひてしこと」が自分が言ったことなのか、相手が言ったことなのかは微妙で、どちらともとれる。 782番の小野小町の「言の葉さへに うつろひにけり」という歌の場合と同じように、二人がかつて取り交わした言葉と考えて、「二人」ともとれないこともない。

  この歌の "はやく" は、856番の歌の読人知らずの哀傷歌にある「たつ野とはやく なりにしものを」と同じ使われ方である。また、「はやく」の意味が異なるが、「吉野川/はやく」という言葉を使った歌としては、651番に「吉野川 水の心は はやくとも」という読人知らずの歌もある。 「つらし/つらき」という言葉を使った歌の一覧は 624番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/14 )   
(改 2004/01/27 )   
 
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