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古今和歌集の部屋
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巻十六
父が思ひにてよめる
壬生忠岑
841
藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 緒とぞなりける
藤衣 ・・・ 喪服
はつる ・・・ ほつれる
玉の緒 ・・・ 珠を貫いて通す紐
詞書にある「父が思ひにて」とは、父の喪に服している時ということ。
喪服からほつれて出る糸は、悲しむ自分の涙を集めてつなぐ 「玉の緒」となっている
、という歌で、水晶の念珠のイメージのある歌である。 「藤衣」には粗末な服という意味もあるので、糸がほつれ出るという感じと合っており、「涙の玉の/緒」という切れ方は見方によっては、悲しみで言葉が途切れているような感じを表わしているとも言える。
単に言葉の音だけのつながりだが、この歌の 「はつる」は 「果つ」を連想させ、哀傷歌と恋歌の違いがあるが、悲しみと涙という点で、どことなく次の読人知らずの歌を思い出させる。
813
わびはつる
時さへものの かなしきは いづこをしのぶ 涙なるらむ
「藤衣」を使った歌の一覧については
307番
の歌のページを、「わび人」という言葉を使った歌の一覧は
292番
の歌のページを参照。
( 2001/11/08 )
(改 20041/01/25 )
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