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       題しらず 読人知らず  
307   
   穂にもいでぬ  山田をもると  藤衣  稲葉の露に  濡れぬ日ぞなき
          
     
  • 藤衣 ・・・ 粗末な衣
  • もる ・・・ 番をする (守る)
  
穂もたくさん実らない山の田の番をしていると、自分の粗末な衣は、稲の葉の露に濡れない日はない、という歌。

  「穂に出づ」というのは、「明らかにする」ということで、この歌や次の 308番の歌では、「実を結ぶ−世に認められる」というニュアンスも感じられる。パッとしない田んぼの番人は、その服もまたパッとせず、苦労ばかり多くて毎日が泣きの連続である、という感じか。 「穂に出づ」という表現を使った歌の一覧は 243番の歌のページを参照。また、「穂にもいでぬ山田」を明らかにできない心の内、と考えれば、この歌を恋歌と見ることもできそうである。そうすると恋歌で 「稲葉」関連ということで、584番の躬恒の「稲葉のそよと 言ふ人のなき」という歌も思い出される。

  「藤衣」はここでは 「粗末な衣」を表しているが、この歌以外では以下のように 「喪服」の意味として使われている。

 
     
307番    山田をもると  藤衣  読人知らず
654番    誰によそへて  藤衣着む  読人知らず
841番    藤衣 はつるる糸は  わび人の  壬生忠岑
1002番    藤衣 おれる心も  八千草の  紀貫之


 
( 2001/12/10 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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