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       題しらず 読人知らず  
893   
   かぞふれば  とまらぬものを  年といひて  今年はいたく  老いぞしにける
          
     
  • いたく ・・・ ひどく
  
数えても止まらないものを「年」と言うが、本当に今年はひどく老いた感じがする、という歌。 898番の「とどめあへず むべも年とは いはれけり」という歌などと同じで、「年」に 「疾し」(とし:=早いこと)を掛けていることはわかるが、 "かぞふれば とまらぬ" という部分がわかりづらい。

  一歳から自分の歳を指折り数えてみると今の歳になるまでかなりかかる、ということを 「止まらぬ」と表現しているものか。そして数え終わって見ると、ずいぶん早く過ぎたものだと思う一方で、こんなに歳が積もった結果の今年だと思うと、どっと疲れが押し寄せてくる、という感じか。

  「いたく」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
50番    桜花  いたくなわびそ 我見はやさむ  読人知らず
196番    きりぎりす  いたくな鳴きそ 秋の夜の  藤原忠房
260番    白露も  時雨もいたく もる山は  紀貫之
893番    今年はいたく  老いぞしにける  読人知らず


 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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