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       題しらず 読人知らず  
912   
   わたの原  寄せくる浪の  しばしばも  見まくのほしき  玉津島かも
          
     
  • わたの原 ・・・ 海原
  • 見まく ・・・ 見ること
  
大海原に寄せる波のように何度も繰り返し見たい玉津島である、という歌。 「玉津島」は現在の和歌山県和歌山市和歌浦中三丁目にある玉津島神社のあたりといわれている。美しい場所だったらしく、万葉集・巻七1222の歌にもこの歌と似た感じが詠われている。

    玉津島  見れども飽かず  いかにして  包み持ち行かむ  見ぬ人のため

  「玉津島」の 「玉」をとって 「包み持ち行かむ」と言ったものだろう。また、この万葉集の歌は 54番の「桜花 手折りてもこむ 見ぬ人のため」という読人知らずの歌や、 309番の「もみぢ葉は 袖にこき入れて もていでなむ」という素性法師の歌を思い出させる。

  この歌と同じように波によせて何度見ても見飽きないと詠うものとしては、恋歌四に置かれた次の読人知らずの歌がある。

 
682   
   石間ゆく  水の白浪   立ち返り  かくこそは見め  あかずもあるかな  
     
        「見まくほし」という表現を使った歌の一覧については 620番の歌のページを、「かも」という終助詞を使った歌の一覧については 664番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/15 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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