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       題しらず 読人知らず  
16   
   野辺近く  いへゐしせれば  うぐひすの  鳴くなる声は  朝な朝な聞く
          
     
  • いへゐ ・・・ 家に住んでいること(家居)
  • 朝な朝な ・・・ 毎朝
  
野の近くに家があるのでウグイスの鳴く声は毎朝聞いているよ、という歌。

  古今和歌集の配列からすれば、この歌はウグイスの流れを一旦止めて、野辺関係の歌に移るつなぎの役割を果たしているが、それ以上に自然の石を拾ってきてそのままそこに置いたかのような素朴さが際立っている。人の興味を引くような面白さはないが、一つの歌のスタイルではある。同じ 「野辺」「うぐひす」という言葉を使った次の読人知らずの歌と比較して見てみたい。

 
105   
   うぐひす の  鳴く  野辺 ごとに  来て見れば  うつろふ花に  風ぞ吹きける
     
        "鳴くなる声" の 「なる」は伝聞推量の助動詞「なり」の連体形。ここでは、「特に意識して聞いているわけではないけれど、自然と耳に入ってくる声、そう、あれはウグイスだな」という程度のニュアンスを表している。 「鳴くなる」という言葉を使った歌の一覧は 1071番の歌のページを参照。

 "朝な朝な" は、ここでは 「アサナアサナ」と読むが、万葉集でいう 「朝旦/朝々/安佐奈々々/阿佐奈佐奈」と書かれる 「アサナサナ」と同じである。 「朝な」の 「な」は接尾語で、「夜な夜な」の 「な」も同じ。これらを使った歌をまとめておくと次の通り。

 
     
16番    うぐひすの  鳴くなる声は 朝な朝な聞く  読人知らず
213番    雁がねの  鳴きこそわたれ 秋の夜な夜な  凡河内躬恒
376番    朝なけに  見べき君とし たのまねば  寵
432番    きりぎりす  夜な夜な鳴かむ 風の寒さに  読人知らず
513番    朝な朝な  立つ河霧の 空にのみ  読人知らず
681番    朝な朝な  我が面影に はづる身なれば  伊勢
683番    伊勢の海人の  朝な夕なに かづくてふ  読人知らず
1013番    郭公  での田をさを 朝な朝な呼ぶ  藤原敏行


 
( 2001/09/13 )   
(改 2004/02/20 )   
 
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