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       題しらず 小野小町  
727   
   海人の住む  里のしるべに  あらなくに  うらみむとのみ  人の言ふらむ
          
     
  • しるべ ・・・ 道案内人
  
あたしは海人の里の観光ガイトじゃないのに、何で「浦見む」と一つ覚えのように言ってくるのかしら、という歌。現代では "しるべ" がそのままでは通じないが、「恨みむ」(=恨みます)と「浦見む」(=浦を見よう)を掛けた、軽妙でわかりやすい歌である。

  "しるべ" が作者のことなのか、相手のことなのかわかりづらいが、「こちらには恨まれる筋合いはない(浦の専門家ではない)のに、あなたは私に対して 「うらみむ、うらみむ」とうるさく言ってくる」ということで、 "しるべ" は作者のことであるとするのが一般的である。内容的には 816番の読人知らずの「海人の住むてふ うらみつるかな」の歌への返しのようにも見えないことはない。

  恋歌の中で同じ "あらなくに" という言葉を使っている歌としては、次の貫之の歌がある。

 
597   
   我が恋は  知らぬ山ぢに  あらなくに   惑ふ心ぞ  わびしかりける
     
        「あらなくに」という言葉を使った他の歌の一覧は、 186番の歌のページを参照。また、「しるべ」という言葉を使った歌の一覧は 13番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/22 )   
(改 2004/01/13 )   
 
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