題しらず | 紀有朋 | |||
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桜色に衣は深く染めて着よう、花が散った後の形見に、という文字通りの歌である。紀有朋(ありとも)は紀友則の父で、879年従五位下、880年没。 この歌は春歌上の終わりにあって、桜を惜しむ気持ちを表わしている。まだ 「有る」状態を見て、それが 「無い」状態のことを思い浮かべるというかたちである。桜の色は薄い色だが、それを "深く 染めて着む" ということは、うつろわないようにという意味であろう。 7番の「心ざし 深く染めてし 折りければ」という歌も連想される。また、恋歌五の読人知らずの歌に次のようなものがある。 |
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細かいことを言えば、「この時代に桜色という染色名があったのか」とか、「そうした色は男もつけるものなのか」とか、「紅花で薄く色づけしたものなのか、桜の幹から採ったのか」など、いろいろ考えはあるのだろうが、ここではそうしたことはあまり考えずに、単に満開の桜に包まれていたいという気持ちが "衣" という言葉を導いたと見ておきたい。 また、次の読人知らずの歌が 「梅」の 「香」を 「袖にうつす」と詠っているのに対して、この有朋 の歌は、「桜」は 「色」を 「染めて着る」と言っているようで面白い。 |
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「形見」という言葉を使った歌の一覧は 743番の歌のページを参照。 |
( 2001/09/10 ) (改 2004/02/25 ) |
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