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       なぬかの夜の暁によめる 源宗于  
182   
   今はとて  別るる時は  天の河  渡らぬ先に  袖ぞひちぬる
          
     
  • ひちぬる ・・・ 濡れる (漬つ)
  
いよいよ別れの言葉を交わす時には天の河を渡る前から涙で袖が濡れる、という歌である。詞書から七月七日の夜明け前の別れの場面で牽牛が舟で帰ることを想定したもののように見えるが、詞書の感じや、直前の 181番の素性の歌と続けて読むと、秋歌に置かれて入るが、宗于(むねゆき)が女の元から帰る時のものであるように思える。

  七夕の歌ではないが、再会の日の遠さを思った歌としては、離別歌の部に次の読人知らずの歌がある。

 
401   
   かぎりなく  思ふ涙に  そほちぬる  袖はかわかじ    あはむ日までに  
     
        "今はとて" とは 「今は(サヨウナラ: bye-bye)、とて」ということで、この言葉を使った歌には次のようなものがあり、638番の藤原国経の歌の「明けぬとて いまはの心 つくからに」、773番の読人知らずの歌の「今しはと わびにしものを」というものも同じような意味と考えられる。

 
     
182番    今はとて  別るる時は 天の河  源宗于
737番    今はとて  かへす言の葉 拾ひおきて  源能有
782番    今はとて  我が身時雨に ふりぬれば  小野小町
800番    今はとて  君がかれなば 我が宿の  読人知らず


 
( 2001/10/15 )   
(改 2004/01/20 )   
 
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