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       題しらず 読人知らず  
800   
   今はとて  君がかれなば  我が宿の  花をばひとり  見てやしのばむ
          
     
  • 今はとて ・・・ これで終わり、と
  • かれなば ・・・ 遠のいてしまったら (離る:かる)
  
もう二人の仲は終わりとして、あなたが来なくなったなら、庭の花を一人見てあなたを偲ぼうと思います、という歌。一つ前の 「かれなむ人」を 「あかず散りぬる 花とこそ見め」という 799番の素性法師の歌と似たような感じの歌である。 「今はとて」という言葉を使った歌の一覧は 182番の歌のページを、「離る(かる)」という言葉を使った歌の一覧は 803番の歌のページを参照。

  この歌の "見てやしのばむ" という言葉は、秋歌下に置かれた 285番の「恋しくは 見てもしのばむ もみぢ葉を」という読人知らずの歌を思い出させる。 「しのぶ」を使った歌の一覧については 
505番の歌のページを参照。次の遍照の歌も、この歌と同様に道具立てがシンプルで、似たような心境を詠っている。

 
770   
   我が宿は   道もなきまで  荒れにけり  つれなき人を  待つとせしまに
     
        また、次の読人知らずの歌は、曖昧で少しわかりづらいが、恋歌五に置かれているのでやはり恋の終わりの歌であろう。そこで 「我が宿」を 「見たとは言わないでください」と言っているのも、(世間体を気にしてということはあるだろうが)人の口に上ってしまうと二人の思い出が踏みにじられてしまうから、という気持ちも多少は含まれているように思える。

 
811   
   それをだに  思ふこととて  我が宿を   見きとな言ひそ  人の聞かくに
     

( 2001/10/18 )   
(改 2004/03/05 )   
 
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