題しらず | 読人知らず | |||
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一つ前の 496番の歌が、人知れず恋しているのは苦しいので「末摘花の 色にいでなむ」と言っているのに対して、ススキの穂を人々の群れに見立て、その中であの人の目にとまるために "色にや恋ひむ" と前向きな気持ちを表している。また、「尾花=ススキの穂=花薄」とすると、549番の「花薄 などか穂にいでて 恋ひずしもあらむ」のように周りはみんな気持ちを表に出している(=「穂に出づ」)中、自分も頑張ります、と言っているようにも見える。 最後に空きを埋めるように置かれた "あふよしをなみ" という言葉が面白い響きを持っている。これは 「逢ふ+よし+を+無+み」で「無(な)」は形容詞「無し」の語幹で、「み」は理由を表わす接尾語。 「〜を+形容詞(の語幹)+み」というかたちを持っている歌には次のようなものがある。 |
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ちなみに 640番の 「別れを惜しみ」や 653番の 「名を惜しみ」の 「惜しみ」は動詞「惜しむ」の連用形、644番の「夢をはかなみ」の 「はかなみ」も動詞「はかなむ」の連用形とも考えられるので一覧からはずしてある。 この 「〜を+形容詞(の語幹)+み」の助詞「を」がなく、 50番の 「山高み」のようになっている例も多く、その他に理由を表す接尾語を使ったものとしては、「べし」と結びついた 281番の「散りぬべみ」などがある。 「よし(由)」という言葉を使った歌の一覧については 347番の歌のページを参照。 |
( 2001/11/26 ) (改 2004/02/18 ) |
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