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       秋のはつる心を竜田川に思ひやりてよめる 紀貫之  
311   
   年ごとに  もみぢ葉流す  竜田川  みなとや秋の  とまりなるらむ
          
     
  • みなと ・・・ 河口
  • とまり ・・・ 停泊所
  
毎年紅葉を流す竜田川のその河口は、秋の停泊所なのだろうか、という歌。 293番の素性法師の「もみぢ葉の 流れてとまる みなとには」という歌とイメージがだぶるが、本居宣長が「古今和歌集遠鏡」で 「ソレナラ湊ヘ尋ネテイテ秋ニアヒタイモノヂヤ」と補って訳しているのを合わせるとわかりやすい。竜田川を秋の帰り道としている歌である。ただ、そうすると今度は秋歌下の最後の 313番の躬恒の「道知らば たづねもゆかむ」という歌の先取りのようになってしまうが。

  「年ごとに」と詠い出す歌としては、秋歌上のはじめの方に次の躬恒の歌があり、秋歌下にある貫之のこの歌と呼び合っているようにも見えて面白い。

 
179   
   年ごとに   あふとはすれど  七夕の  寝る夜の数ぞ  少なかりける
     
        また、次の伊勢の歌でもこの歌で使われている "とまり" という言葉が使われている。

 
920   
   水の上に  浮かべる舟の  君ならば  ここぞとまりと   言はましものを
     
        「竜田川」の歌の一覧については 302番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/14 )   
(改 2004/02/11 )   
 
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