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       仁和のみかどみこにおはしましける時に、布留の滝御覧じにおはしましてかへりたまひけるによめる 兼芸法師  
396   
   あかずして  別るる涙  滝にそふ  水まさるとや  しもは見るらむ
          
        兼芸法師は生没年不詳、伊勢少掾・古之の次男とされるが仔細不明。古今和歌集にはこの歌を含めて四首が採られている。詞書にある「仁和のみかどみこにおはしましける時」とは光孝天皇が時康親王と呼ばれていた頃、ということ。 「布留の滝」は現在の奈良県天理市滝本町にある 「桃尾の滝」がそれに当たるかとも言われている。

  
別れを惜しんで流れる涙は滝に沿って流れ落ち、下流では水かさがまして見えるでしょう、という歌。 "滝にそふ" の「そふ」は 683番の藤原国経の「など言ひ知らぬ 思ひそふらむ」という歌を見ると、「加わる」という意味の「添ふ」というニュアンスであるような気もする。

  親王を送るに際して自分が "あかず" と言い、その一方で  "しもは見るらむ" とコバンザメのように言っている言葉遣いにはどうも臭みを感じる。

  「あかずして」という言葉を使った歌には次のようなものがある。 「あかず(飽かず)」という言葉を使った歌の一覧は 157番の歌のページを参照。

 
     
396番    あかずして  別るる涙 滝にそふ  兼芸法師
400番    あかずして  別るる袖の 白玉を  読人知らず
883番    あかずして  月の隠るる 山もとは  読人知らず
1002番    あかずして  わかるる涙  紀貫之


 
( 2001/10/15 )   
(改 2004/02/11 )   
 
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