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       題しらず 読人知らず  
493   
   たぎつ瀬の  なかにも淀は  ありてふを  など我が恋の  淵瀬ともなき
          
     
  • たぎつ瀬 ・・・ 水の激しい流れ
  • 淀 ・・・ よどんだ所
  • など ・・・ なぜ
  
実際の川では激しい流れの中にも所によっては淀んだ場所があるというのに、どうして自分の恋しい気持ちは淵も瀬もなく、ただひたすらほとばしるばかりなのだろう、という歌。 「淵」は深い所で、「瀬」は浅い所。淵では水が淀み、瀬では 「早瀬」というように流れが速くなる。川の縁語でまとめられていて面白い歌であり、単に言葉上のことだが 「たぎつ」に対して 「」と順序が反転している。

  また、"ありてふを" と言葉は柔らかいが 「狂」の歌であり、古今和歌集の配列ではこの歌は次の二つの 「恋は死ぬとも」という歌に挟まれている。

 
492   
   吉野川  岩切りとほし  行く水の  音にはたてじ  恋は死ぬとも  
     
494   
   山高み  下ゆく水の  下にのみ  流れて恋ひむ  恋は死ぬとも  
     
        「淵」と 「瀬」をペアで使っている歌には次のようなものがある。

 
     
493番    など我が恋の  淵瀬ともなき  読人知らず
687番    飛鳥川 淵は瀬になる  世なりとも  読人知らず
722番    やは騒ぐ 山川の  浅き瀬にこそ  素性法師
836番    をせけば  となりても 淀みけり  壬生忠岑
933番    昨日の  今日はになる  読人知らず
990番    にもあらぬ 我が宿も  今日はにかはりゆく  伊勢


 
        「〜てふ」という表現を持った歌の一覧は 36番の歌のページを参照。 「など」という言葉を使った歌の一覧は 155番のページを参照。

 
( 2001/08/18 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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