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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 藤原興風  
102   
   春霞  色のちぐさに  見えつるは  たなびく山の  花のかげかも
          
     
  • ちぐさに ・・・ さまざまに (千種に)
  
春霞が色々な色に見えたのは、それがたなびく山の花の影だったのかもしれない、という歌。

霞がソフトフィルターのように花の色を柔らかくぼかしているイメージである。 「たなびく−山の−花の−かげかも」というリズムが心地よく、姿が整っている。 "見えつる" の 「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、「見えつる[様子]は」ということ。確かにそう見えたのは、というニュアンスが感じられる。 「春霞」を詠った歌の一覧は 210番の歌のページを参照。

  「花のかげ」という言葉を使った歌には他に 95番の素性法師の歌と、134番の躬恒の歌があり、またこの歌の秋バージョンとしては秋歌下に次の読人知らずの歌がある。

 
290   
   吹く風の  色のちぐさに    見えつるは   秋の木の葉の  散ればなりけり
     
        また、秋+恋歌で 「ちぐさ」が使われている歌としては、恋歌二に次の貫之の歌がある。

 
583   
   秋の野に  乱れて咲ける  花の色の    ちぐさに 物を  思ふころかな
     
        「かも」という終助詞を使った歌の一覧については 664番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/31 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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