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       題しらず 紀貫之  
599   
   白玉と  見えし涙も  年ふれば  唐紅に  うつろひにけり
          
        恋のはじめのうちは 「白玉」と見えていた涙も、つらい年月が経つにつれて、紅の色の血の涙と変ってしまいました、という歌。涙に譬えられる「白玉」のイメージは真珠あるいは水晶で、例えば 
556番の安倍清行の歌に「つつめども 袖にたまらぬ 白玉は」という歌がある。

  "年ふれば " は、「年経れば」であるが、一つ前の 598番の同じ貫之の「紅の ふりいでつつ なく涙には」という歌と合わせてみると、その 「ふる」には紅を 「ふり出づ」の 「振る」も掛かっているように見える。 「紅」を詠った歌の一覧は 723番の歌のページを、「経(ふ)」という一文字の動詞を使った歌の一覧は 596番の歌のページを参照。

  また"うつろひにけり" という言葉からは、279番の平貞文の「秋をおきて 時こそありけれ」という 
「菊の花」のイメージも連想される。 「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。

 
( 2001/09/27 )   
(改 2004/03/06 )   
 
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