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       題しらず 読人知らず  
652   
   恋しくは  したにを思へ  紫の  ねずりの衣  色にいづなゆめ
          
     
  • ねずりの衣 ・・・ 根を染料として摺った衣
  • ゆめ ・・・ 決して (禁止・打消しを強める副詞)
  
恋しい時は密かに思いなさい、決してムラサキグサの根で摺った衣のように、気持ちを決して表に出してはいけません、という歌。

  "したにを" の 「を」は、224番の読人知らずの萩の歌に「濡れてゆかむ」とあるのと同じ詠嘆を表わす間投助詞である。また、最後の "ゆめ" は 「決して」という意味を表わす副詞。 "ねずり" 
の 「ね」を 「寝」に掛けて、 "ゆめ" を 「夢」に掛けて 「夜」関係の縁語としている。 「紫」の色合いが美しい歌である。もちろん 「紫のねずみの衣」ではない。 「紫」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
652番    紫の ねずりの衣  色にいづなゆめ  読人知らず
693番    濃紫 我がもとゆひに  霜は置くとも  読人知らず
867番    紫の ひともとゆゑに  武蔵野の  読人知らず
868番    紫の 色濃き時は  めもはるに  在原業平


 
        また、「恋しくは」という言葉を使った歌の一覧については 285番の歌のページを、「色に出づ」という表現を使った歌の一覧は 663番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/08 )   
(改 2004/02/06 )   
 
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