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- つづら ・・・ つる草の総称 (葛)
- 末つひに ・・・ ゆくゆく最終的には
- ことのしげけむ ・・・ うるさい噂が立つだろう
この歌には 「このうたは、ある人、天の帝の近江のうね女にたまひけるとなむ申す」という左注がついている。 「天の帝」は単に天皇を指すとも、天智天皇を指すものとも言われている。 「うね女」は采女で、天皇の側に仕える女官。
「梓弓−引く−ひき野」でそこに生える 「つづら」から 「末(草木の先端)−末(ゆく末)」を掛けて、これから先ついには、自分の思う人に対して世間の人があれこれ言うことだろう、という歌である。 「ひき野」は仁徳天皇陵の東南、現在の大阪府堺市日置荘西町(ひきしょうにしまち)あたりと言われている。
つる草がからみつき生い茂る様子を 「言(こと)しげし」というイメージに合わせている歌である。 "しげけむ" は 「しげけ+む」で 「しげけ」は 「繁し」という形容詞の古い未然形のかたち。それに推量の助動詞「む」の終止形がついている。この形容詞の古い未然形のかたちに推量の助動詞「む」が接続されている例は、古今和歌集の中の歌ではこの歌だけである。 「言しげし」という歌の一覧については 550番の歌のページを参照。
「末つひに」とは 「末」も 「つひに(終に)」も似たような感じだが、「この先、最終的には」というニュアンスであろう。 「つひに」という言葉を使った歌の一覧は 707番の歌のページを参照。
梓弓と言えば、「はる」に掛けられている歌が三首、「ひく」に掛けられているものが二首となっているが、次の読人知らずの歌は何に掛けられているのか少しわかりづらい。
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