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       題しらず 読人知らず  
704   
   里人の  ことは夏野の  しげくとも  枯れ行く君に  あはざらめやは
          
     
  • 里人 ・・・ その土地に住んでいる人々
  • こと ・・・ 噂
  
夏草のように人々の噂がいくらうるさくても、いつか離れて行くあなただから、今逢いたいという気持ちは抑えられない、という歌。少しわかりづらい歌である。

  「言しげし」はうるさい噂がたつことで、それを夏草が生い茂る様に合わせ、その草のイメージから 「枯る−離(か)る」とつないでいる。 「離る(かる)」という言葉を使った歌の一覧は 803番の歌のページを参照。ここでの 「枯る」は 686番の躬恒の「枯れはてむ のちをば知らで 夏草の」と同じニュアンスである。 "あはざらめやは" の 「やは」は反語で 「あわないことがあるだろうか(いや、ない)」ということ。 「やは」を使った歌の一覧については 106番の歌のページを参照。

   "あはざらめやは" を使った 512番の読人知らずの歌の「恋をし恋ひば あはざらめやは」と並べてみると、「離れて行くあなたに(再び)逢わないことがあるだろうか」と言っているような感じもするが、ここではそこまで先のことは言っていないような気がする。

  「言しげし」と 「枯る」を組み合わせた歌としては、他に次の読人知らずの歌がある。

 
716   
   空蝉の  世の 人ごとの    しげければ   忘れぬものの  かれぬ べらなり
     
        「言しげし」という歌の一覧については 550番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/03/05 )   
 
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