題しらず | 読人知らず | |||
73 |
|
梅の花を詠んだ貫之の 45番の歌の 「いつの人まに うつろひぬらむ」と比べると、「空蝉(うつせみ)の世」と構えているせいか、空間的な広がりが感じられる。 「うつせみ」という言葉は、元々 「現し臣(うつしおみ)」からきているものと言われ、「世」にかかる枕詞であるが、ここでは 「うつせみの世」とは、人が生きて活動している様、ということで 「花」の世界と対比させている。 「空蝉」という言葉を使った歌には次のようなものがあり、424番/ 425番には 「うつせみ」の物名の歌もある。 |
|
また、この歌で目につくのは "花桜" という言い方である。 「桜花」は多く出てくるが、「花桜」という言葉は古今和歌集の中でこの歌だけで使われている。桜の一つの種類とする見方がある一方、元永本などの伝本では 「桜花」としているものもあるという。 歌の調べは 「桜花(サクラバナ)」だと最後の 「バナ」が下向きで落ち着いた感じ、「花桜(ハナザクラ)」だと 「ザ」が中間にあって 「クラ」と抜けるので少し明るい感じがする。「桜花」ばかりでは飽きるので 「花桜」が混じってもよい、という程度に考えてもよいような気もする。 |
( 2001/12/10 ) (改 2004/02/24 ) |
前歌 戻る 次歌 |