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       題しらず 紀貫之  
597   
   我が恋は  知らぬ山ぢに  あらなくに  惑ふ心ぞ  わびしかりける
          
        自分の恋は知らない山道でもないのに、これほどに惑う心がわびしいことだ、という歌。 「恋しくて惑う心がつらい」というこの歌に対し、「恋しくてつらいので心が惑う」といっているものに次の読人知らずの歌がある。 「わびし」という言葉を使った歌の一覧は 8番の歌のページを参照。

 
571   
   恋しきに    わびて たましひ  惑ひなば   むなしき殻の  名にや残らむ
     
        また恋歌一には、恋に悩む心によって、身が惑うという次のような歌もある。

 
523   
   人を思ふ  心は我に  あらねばや    身の惑ふ だに  知られざるらむ
     
        「あらなくに」(=〜でもないのに)と 「あらねばや」(=〜ではないのか)とは意味は異なるが、三句目に置かれているつなぎとしてはかたちが似ている。 「あらなくに」という言葉を使った歌の一覧については 186番の歌のページを参照。また、「惑ふ山ぢ」を「惑ふ夢ぢ」に替えると、次のような読人知らずの歌も連想される。

 
524   
   思ひやる  さかひはるかに  なりやする  惑ふ夢ぢに   あふ人のなき
     

( 2001/11/27 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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