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色のない心をあなたの色で染めてからというもの、それが褪せてゆくなどとは思いもしなかった、という歌。 "色もなき" ということには 「初めての恋」というニュアンスがあるように思われる。それが今、だんだんと薄くなって、恋人の 「色=気持ち」は別の人に移りはじめ、そちらの人の心が濃く染まりはじめた、という感じか。同じ貫之の歌としては、恋歌二にある 572番の「胸のあたりは 色もえなまし」という歌が思い出される。
あるいは 「色もなき心」という言葉は、797番の小野小町の「色見えで うつろふものは」という歌あたりから起こしているような感じでもある。 「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。
"思ほえなくに" という言葉は 580番の「秋霧の 晴るる時なき 心には」という躬恒の歌でも使われていて、「思ほえ+なくに」である。 「思ほゆ」は 「自然と思われる・思いつく」ということ。 「なくに」は文末/区切りにあって、詠嘆の意味を込めた否定を表している。 「思ほゆ」を使った歌の一覧は 33番の歌のページを、「〜なくに」という言葉を使った歌の一覧は 19番の歌のページを参照。
また、この歌は「そめぬうへのきぬのあやをおくるとてよめる」という詞書を持つ 869番の近院右大臣(=源能有)の「深き心に 染めてしものを」という歌とも通じるものがある。
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