Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十五

       題しらず 小野小町  
822   
   秋風に  あふたのみこそ  かなしけれ  我が身むなしく  なりぬと思へば
          
        秋風にあう田の実こそつらいものだと思います、飽きられて頼みを失った我が身が空しくなってしまったことを思えば、という歌。 「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを参照。

  「田の実−頼み」を掛けた歌としては 467番の大江千里の 「ちまき」の物名の歌があるが、ここではさらに 「たの」に 「我が」を合わせて「実がなる−身がなる」と言い、「実−空」という対比も詠み込んでいる。 「頼み/頼む」という言葉を使った歌の一覧については 613番の歌のページを参照。また、この歌の 「かなし」はつらい境遇になった我が身から見て「愛しい」と言っているようでもある。 「かなし」については 578番の歌のページを参照。

  この歌は恋歌五に置かれていて恋の終わりの局面であるが、「頼み」つながりとして同じ小町の恋歌二にある次の歌を並べて見たい。

 
553   
   うたたねに  恋しき人を  見てしより  夢てふものは  たのみそめてき  
     
        また、この歌の "あふたのみこそ かなしけれ" という駄洒落入りのフレーズは、次の読人知らずの誹諧歌を思い出させる。

 
1058   
   人恋ふる  ことを重荷と  になひもて  あふごなきこそ    わびしかりけれ  
     

( 2001/10/23 )   
(改 2004/03/11 )   
 
前歌    戻る    次歌