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       題しらず 読人知らず  
821   
   秋風の  吹きと吹きぬる  武蔵野は  なべて草葉の  色かはりけり
          
     
  • なべて ・・・ 一面に (並べて)
  
秋風が吹きすさぶ武蔵野は、一面の草葉の色が変わってしまった、という歌。恋歌五に置かれているが秋の歌と見てもおかしくない。恋歌としては飽きられ、捨てられてしまった我が身の回りはすべてが変ってしまった、という感じか。

 "武蔵野" という荒原のイメージに "吹きと吹きぬる" という吹き乱れる野風を表わす言葉の重ねを合わせていて効果的である。同じ 「秋風」を使った 725番の「秋風に なびくあさぢの 色ことになる」という歌や、「吹きまよふ」という言葉の解釈の問題はあるが、781番の「吹きまよふ 野風を寒み 秋萩の」という歌をより強めたような感じに見える。 「なべて」という言葉を使った歌の一覧は 
334番の歌のページを参照。

  少し前にも 816番の「立ち返り」、817番の「あらすきかへし かへしても」という繰り返しのイメージの歌があったが、この歌の "吹きと吹きぬる" という表現も、一つ置いた次の平貞文の 「うらみてもなほ うらめしきかな」という言葉の重ねにつながっているようである。

 
823   
   秋風の  吹き裏返す  くずの葉の  うらみてもなほ    うらめしきかな  
     
        また、この歌から三首、「飽き」に掛けた 「秋風」の歌が続く。 「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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