Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十七

       題しらず 読人知らず  
864   
   おもふどち  まとゐせる夜は  唐錦  たたまく惜しき  ものにぞありける
          
     
  • おもふどち ・・・ 気の合った者たち
  • まとゐ ・・・ 車座になって座ること
  
仲間同士が車座に座って語らいをしている夜は、高級な唐錦を裁つのがもったいないように、立ってその場を離れるのがつらいものだ、という歌。宴会の席で、ちょっとトイレに立つ時に詠み捨てたような感じに見えなくもない。 「唐錦」を序詞として 「裁つ」を導き、それに 「立つ・起つ」を掛けている。「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) のように、宴を中断するということで 「絶つ」が掛けられていると見る説もある。

  "たたまく惜しき" は 「たた+まく+惜しき」で、「たた」は 「たつ(裁つ・立つ・起つ・絶つ)」の未然形。 「まく」はその後ろに 「欲し/惜し」を伴って 「〜するようなこと」という感じを表わす言葉で、古今和歌集の中では 「見まくほし」が五首の歌で使われている。その一覧については 620番の歌のページを参照。この歌と同じ 「惜し」に付いているものとしては、981番の読人知らずの歌「伏見の里の 荒れまくも惜し」というものがある。

  「錦」を詠った歌の一覧については 296番の歌のページを、「〜にぞありける」という表現を使った歌の一覧は 204番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/23 )   
(改 2004/03/07 )   
 
前歌    戻る    次歌