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この歌には 「ある人のいはく、このうたはさきのおほいまうちぎみのなり」という左注がついている。 「さきのおほいまうちぎみ」とは、藤原良房のこと。厳密に言うと、7番の歌の左注や、830番の歌の詞書では 「さきのおほきおほいまうちぎみ」(=前の太政大臣)であるのに対し、この歌の左注では 「さきのおほいまうちぎみ」(=前の大臣)であるが、同じ良房を指しているものと一般的に考えられている(ただし、「古今和歌集全評釈 補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) では「誰とも不明」と書かれている)。 ちなみに伊勢物語の第九十八段では、「昔、おほきおほいまうちぎみときこゆるおはしけり。」となっている。
限りないあなたのためにと折る花は、季節など関係なしに咲く花でした、という歌。 "時しもわかぬ" の 「わく」は四段活用の「分く」で、「区別する」ということ。「時(を)わかず」は、「季節に関係なく・いつでも」という意味で、 「時しもわかぬ花」とは普通に考えれば造花のことであろう。もちろん、造花を 「折った」ということではなく、枝のついた造花を、今、幹から折ってきたという見立てで言っているものと思われる。ただし、上記の伊勢物語の第九十八段が、この歌を元にしたと思われる次の歌を載せて、「とキシもわかぬ」にキジを掛けて「梅の作り枝に雉をつけて奉る」と言っているのは少し行き過ぎか。
わがたのむ 君がためにと 折る花は 時しもわかぬ ものにぞありける
造花の歌としては、445番の文屋康秀の物名の「花の木に あらざらめども 咲きにけり」の歌が有名であるが、この歌の 「時しもわかぬ花」は、一つ前の読人知らずの次の歌からプレゼント関係として続けて見ると、単なる造花ではなく、「竹取物語」の 「蓬莱の珠の枝」のような豪華な工芸品であるような感じもする。
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