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       題しらず 読人知らず  
187   
   ものごとに  秋ぞかなしき  もみぢつつ  うつろひゆくを  かぎりと思へば
          
     
  • かぎり ・・・ 限界、極み
  
物ごとに秋は切なく感じられる、紅葉して色が変わってゆくのをそれぞれの 「かぎり」と思えば、という歌。秋の入口に立ってこれからの盛りとその終わりに思いをはせている。美しく色づいてゆくのはすばらしいが、それが最後を飾るものだと思うと、心が痛むという感じであろう。言葉の流れは軽やかで、吹き抜けてゆく風のような趣きのある歌である。

  この歌を秋歌のはじめの方に置き、似たような言葉を使った次の歌を秋歌下に配している点に撰者たちの心くばりが感じられる。また、二つを並べてみると、一方は "ものごとに" と広角に捉え、もう一方は 「もみぢ葉」に寄っているという、秋のとらえ方の違いが見えて面白い。

 
264   
   散らねども  かねてぞ惜しき  もみぢ葉は    今はかぎりの   色と見つれば
     
        また、古今和歌集の中で「かぎり」という言葉を使った歌を一覧してみると次のようになる。

 
        [名詞単体]  
     
187番    もみぢつつ うつろひゆくを かぎりと思へば  読人知らず
189番    秋の夜ぞ 物思ふことの かぎりなりける  読人知らず
264番    もみぢ葉は 今はかぎりの 色と見つれば  読人知らず
309番    秋はかぎりと 見む人のため  素性法師
310番    秋はかぎりと 思ひ知りぬる  藤原興風
611番    あふをかぎりと 思ふばかりぞ  凡河内躬恒
862番    今はかぎりの 門出なりけり  在原滋春


 
        [〜かぎりは]  
     
11番    うぐひすの 鳴かぬかぎりは あらじとぞ思ふ  壬生忠岑
151番    郭公 声のかぎりは 我が宿に鳴け  読人知らず
276番    秋の菊 匂ふかぎりは かざしてむ  紀貫之


 
        [かぎりなし]  
     
367番    かぎりなき 雲ゐのよそに わかるとも  読人知らず
401番    かぎりなく 思ふ涙に そほちぬる  読人知らず
657番    かぎりなき 思ひのままに 夜も来む  小野小町
866番    かぎりなき 君がためにと 折る花は  読人知らず
1085番    君が代は かぎりもあらじ 長浜の  読人知らず


 
        「かなし」という言葉を使った歌の一覧については、578番の歌のページを、「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/06 )   
(改 2004/01/13 )   
 
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