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       物思ひける時、いときなき子を見てよめる 凡河内躬恒  
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   今さらに  なにおひいづらむ  竹の子の  うき節しげき  世とは知らずや
          
     
  • うき節 ・・・ 辛い時期 (憂き節)
  詞書にある 「いときなき子」とは 「幼い子」という意味。歌の方は、
今更どうして生えてくるのか、辛い時が多いこの世と、知らないのだろうか、ということ。自分の子(あるいは孫)か、他人の子かわからないが、いずれにせよシニカルな口調である。赤ん坊の腕か足を見てタケノコを思い出したものか。 「憂きこと」が 「しげし」という歌の一覧については 550番の歌のページを参照。

  竹の縁語で 「節」と 「よ」(=竹の節と節の間)を使って、タケノコはまだ節がないので 「そんな世だと知らないのか」と詠ったものである。 「知らずや」と結ばれる歌には、233番の同じ躬恒の歌に「おのがすむ野の 花と知らずや」という鹿とオミナエシを詠った歌がある。次の読人知らずの歌は、題しらずの歌であり、子供を詠ったものではなさそうだが、どこかこの歌と近いものが感じられる。

 
941   
   世の中の  うきもつらきも  告げなくに  まづ知るものは    涙なりけり  
     

( 2001/11/26 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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