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       題しらず 読人知らず  
958   
   世にふれば  言の葉しげき  呉竹の  うき節ごとに  うぐひすぞ鳴く
          
     
  • 呉竹 ・・・ 中国産の竹。ハチクまたはマダケを指す。
  • うき節 ・・・ 辛い時期 (憂き節)
  
長く生きているといろいろと嫌なことが聞こえてきて、そうしたつらい折々を嘆くようにウグイスが鳴いている、という歌。竹にウグイスという取り合わせは古今和歌集ではこの歌だけだが、万葉集・巻五0824には次のような歌がある。

    梅の花  散らまく惜しみ  我が園の  竹の林に  うぐひす鳴くも

  "うき節" という言葉は一つ前の 957番の躬恒の歌に「うき節しげき 世とは知らずや」とあるものとつながるように並べられており、「うき節」の 「う」に 「憂」が掛けられているのは同じだが、さらにそこに 「うぐひす」と 「う」の音を重ねている。そこから 「うぐひす」に 「憂」を掛けている 422番の藤原敏行の「うくひすとのみ 鳥の鳴くらむ」という物名の歌や 798番の読人知らずの「世をうぐひすと なきわびむ」という歌が思い出される。 "世にふれば" ではじまる他の歌としては、同じ雑歌下に次のような読人知らずの歌がある。

 
951   
   世にふれば   憂さこそまされ  み吉野の  岩のかけ道  踏みならしてむ
     
        "世にふれば" の 「経(ふ)」という言葉が使われている歌の一覧は 596番の歌のページを、 「言の葉」という言葉を使った歌の一覧は 688番の歌のページを参照。 また、「言しげし」という歌の一覧については 550番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/26 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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