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また、 "咲かずやはあらぬ" もわかりづらい言い回しである。順を追ってみると次のようになる。
- 「やは」は、「や(疑問)+は(強調)」で反語を表わす。
- そこに「あらぬ」という否定がついて、「〜やは・あらぬ」で「〜だろうか(いや、そうではない)+ということはない」と反語の否定になる
- その反語の否定はつまり「〜ではないだろうか(いや、ある)」ということである
- その前に「咲く」の否定形で「咲かず」があるので、「咲かない(ことが)+ないだろうか(いや、ある)」となる
- それは結局、咲かない状態を肯定するものとなる
そして、その前に 「同じことなら〜して欲しい」という意味の "ことならば" があるので 「同じことなら、咲かないで欲しい」となり、さらに詞書に「散りける」とあるので、「咲かないで」に過去形の味付けをして 「同じことなら、咲かないでいて欲しかった」ということが前半の意味となる。 「やは」を使った歌の一覧については 106番の歌のページを、「さへに」という言葉を使った歌の一覧は 280番の歌のページを参照。
歌の口調は、53番の業平の「世の中に 絶えて桜の なかりせば」ほど鋭角的ではなく、むしろ優しい感じがする。この優しさのトーンは次の貫之の歌とも共通していて、並べて見ておきたい。
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