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       題しらず 読人知らず  
284   
   竜田川  もみぢ葉流る  神なびの  みむろの山に  時雨降るらし
          
        竜田川に紅葉が流れている、その上流の「神なびのみむろの山」には時雨が降っているのだろう、という歌。左注に「または飛鳥川もみぢば流る」とある。

  "神なびの みむろの山" は、「神なび=神の鎮座する」、「みむろ=御室=神の降りてくる場所」と似た言葉を重ねた修飾で特定の山を指すものではない、という解釈が一般的である。左注の 「飛鳥川」というのは、万葉集第十三3227に 「...神なびの みもろの神の 帯ばせる 明日香の川の 
水脈早み...」などに「神なびのみむろ(みもろ)」とあるのを見て混同したものか。そう考えるとこの歌の 「神なびのみむろの山」は、300番の深養父の「神なびの 山をすぎ行く 秋なれば」という歌の 「神なびの山」と同じで、竜田川付近の山と考えてよいように思われる。

  「神なび」と 「時雨」の組み合わせとしては、次の読人知らずの歌のようなものもある。

 
253   
   神無月  時雨 もいまだ  降らなくに  かねてうつろふ  神なびの もり
     
        そして 「時雨」と 「山」となると、貫之の1010番の旋頭歌で 「三笠の山」、次の歌で 「もる山」と合わされているのを見ることができる。 「時雨」を詠った歌の一覧は 88番の歌のページを参照。

 
260   
   白露も  時雨 もいたく  もる山 は  下葉残らず  色づきにけり
     
        さらに 「竜田川」と 「時雨」の取り合わせとしては、冬歌の先頭に次のような歌がある。

 
314   
   竜田川   錦おりかく  神無月  時雨 の雨を  たてぬきにして
     
        「竜田川」の歌の一覧については 302番の歌のページを参照。また、これらとは別に、宇多天皇が古歌を書いて提出せよと命じた時に、藤原興風がこの "竜田川 もみぢ葉流る" の歌と同じ心を詠んだものとして添えた、という内容の詞書を持つ次のような歌もある。

 
310   
   み山より  落ちくる水の  色見てぞ  秋はかぎりと  思ひ知りぬる
     
        「降るらし」という言葉を使った歌の一覧については 1077番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/13 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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