すみながし | 在原滋春 | |||
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「はるがスミ ナカシかよひぢ」の部分に 「すみながし」が含まれている。 「すみながし(墨流し)」とは、水に墨を流してそこに布や紙を漬して染めることであると言われている。 "なかしかよひぢ" は 「中し通ひ路」で 「し」は強調の副助詞。 歌の意味は、春霞のその中に通り道がなければ、秋にくる雁が北へ帰ることはないだろう、ということ。帰る雁を惜しむ歌である。題の 「すみながし」と合わせて見ると、墨が水に流れるイメージが春霞の中を帰って行く雁の飛行と重なって不思議な感覚が呼び起こされる。白い霞に黒い雁の影という感じである。 「春霞」を詠った歌の一覧は 210番の歌のページを参照。 この歌の一つ前の 「百和香」の物名から、植物名や地名以外を詠み込んだものがはじまり、「おき火(熾き火)」、「ちまき」の歌と続く。こうした題が選ばれた状況はよくわからないが、その無機質なオブジェのような味わいは、まさに 「物の名」という感じがする。 |
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また、"かへらざらまし" の 「ざらまし」は 「ざら+まし」という連語で、打消しの助動詞「ず」の未然形+反実仮想の助動詞「まし」の終止形であり、次のような歌でも使われている。その他のかたちで 「まし」を使っている歌については 46番の歌のページを参照。 |
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( 2001/06/26 ) (改 2004/02/26 ) |
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