題しらず | 紀貫之 | |||
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吉野川の岩間に浪高く行く水のように、早くも激しく、あの人のことを思い染めてしまった、という歌。突然の恋の激しさを詠った歌である。 "思ひそめてし" の「思ひそむ」は「思ひ初む」ともとれる。ここではベースを「染む」として、その前の「早く」からのつながりで「初む」も掛けられていると見ておく。また、「てし」は「て+し」で、完了の助動詞「つ」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。 "早くぞ" からの係り結びで「き」が連体形になっている。「〜してしまった」というニュアンスである。 "岩波高く" と 「高く」に一旦振ってから "早くぞ人を" と「早く」に落としている所が、地味ながらうまい表現である。また、その間に "行く水の" と入れて、「高く−行く−早く」と「く」を連ね、最後は「し」で締めて、調べを整えている。歌全体としてはあまり印象に残らないが、言葉を揺らして楽しんでいる感じがあって面白い。 「吉野川」以外の歌で、 "行く水" を詠った歌としては、次のような読人知らずの歌がある。 「行く水」を詠った歌の一覧は 522番の歌のページを参照。 |
522 |
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「思ひそむ」という言葉を使った歌には次のようなものがある。 |
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( 2001/11/26 ) (改 2004/03/06 ) |
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