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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 小野美材  
560   
   我が恋は  み山隠れの  草なれや  しげさまされど  知る人のなき
          
     
  • み山隠れ ・・・ 深い山奥の
  
自分の恋は深い山奥の草だろうか、草木が繁るように気持ちが増えても、それを知る人はいない、という歌。  素材が 「草」だけという比較的地味な歌である。同じ恋歌二の 604番に貫之の「しげき我が恋  人知るらめや」という似たような歌がある。 「しげき恋」の歌の一覧については 550番の歌のページを、「人知れぬ恋の思ひ」を詠った歌の一覧は 496番の歌のページを参照。

  この歌の中で唯一波の盛り上がりとして目を引くものは "み山隠れ" という言葉だが、これは同じ 「寛平の御時きさいの宮の歌合せ」に出された次の貫之の春歌でも使われている(ただし貫之の歌の方は現存する「寛平御時后宮歌合」には載っていない)。

 
118   
   吹く風と  谷の水とし  なかりせば  み山隠れの   花を見ましや
     
        また、この「み山隠れ」という言葉は、雑歌上の中では 「女どもの見て笑ひければよめる」という詞書のある次の兼芸法師の道化のような歌でも使われている。 「〜なれや」という言葉を使った歌の一覧は 225番の歌のページを参照。

 
875   
   かたちこそ  み山隠れの   朽ち木なれ  心は花に なさばなりなむ
     
        小野美材は和漢朗詠集にも漢詩が二つ採られていて、決して "知る人のなき" という状態の人物ではないが、古今和歌集の中ではドレッシングがかかっていない部分のサラダのような、さっぱりした歌を提供していると言えるだろう。

 
( 2001/12/03 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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