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       題しらず 紀貫之  
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   敷島や  大和にはあらぬ  唐衣  ころもへずして  あふよしもがな
          
     
  • ころもへずして ・・・ 時をおかずに (頃も経ずして)
  
日本にはない唐衣、その 「ころも」ではないが、時をおかずに逢う手だてがあったらなあ、という歌。 "敷島" は三輪山の麓の地名で、大和の国を指す言葉。この歌では 「敷島/大和」は共に 
「唐」に対する日本のことを言っている。二句目までは 「衣」から "ころもへずして" を導くための序詞である。 "あふよしもがな" とは、「逢う手だてがあったらなあ」ということ。全体に長く延ばされた感じの調べを持つ歌である。

  "敷島や" の 「や」は間投助詞で、「地名+や」というかたちを持つ歌の一覧は 871番の歌のページを参照。 "大和にはあらぬ  唐衣" というこの貫之の歌の構え方には、1049番の左大臣(=藤原時平)の歌の「もろこしの 吉野の山に こもるとも」というフレーズを思わせるものがある。

  「唐衣」を使った歌の一覧は 572番の歌のページを参照。 "ころもへずして" の 「経(ふ)」を使った歌の一覧は 596番の歌のページを参照。 "あふよしもがな" の 「よし(由)」という言葉を使った歌の一覧については 347番の歌のページを、「もがな」という願望の連語を使った歌の一覧については 54番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/18 )   
(改 2004/02/27 )   
 
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