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       仁和の御時、僧正遍照に七十の賀たまひける時の御歌 仁和帝  
347   
   かくしつつ  とにもかくにも  ながらへて  君が八千代に  あふよしもがな
          
        このようにして、ともかくも長らえて、あなたが八千代に生きる姿を目にするすべがあればよいのに、という歌。

  仁和帝(にんわのみかど)は光孝天皇。 830年生れ 887年没。没年五十七歳。仁明天皇の第三皇子で、884年二月に五十五歳で即位した。僧正遍照は仁明天皇に仕え、その崩御(850年)によって出家した。遍照の七十の賀は 885年十二月のことである。この時仁明天皇は五十六歳、つまり遍照より十四歳年が若い。しかし、 "君が八千代に あふよしもがな" と言った光孝天皇はその二年後(887年)亡くなっており、遍照の死(890年)よりも早かった。よって、この歌の "とにもかくにも" という言葉も、単なる飾りではないように受け取れる。

  古今和歌集の配列では続けて、「仁和のみかどの、みこにおはしましける時に、御をばの八十の賀にしろがねを杖につくれりけるを見て、かの御をばにかはりてよみける」という詞書のある348番の遍照の「つくからに 千歳の坂も 越えぬべらなり」という歌を載せている。

  "あふよし" の 「よし(由)」は 「手段・方法・理由・縁故」などの意味があり、古今和歌集の中では、次のような歌で使われている。

 
     
347番    君が八千代に  あふよしもがな  仁和帝
447番    ありとは聞けど  見るよしもなき  平篤行
497番    色にや恋ひむ  あふよしをなみ  読人知らず
506番    まぢかけれども  あふよしのなき  読人知らず
617番    袖のみ濡れて  あふよしもなし  藤原敏行
683番    みるめに人を  あくよしもがな  読人知らず
697番    ころもへずして  あふよしもがな  紀貫之
1000番    身をはやながら  見るよしもがな  伊勢
1038番    立ち隠れつつ  見るよしもがな  読人知らず
1043番    人をとどめむ  よしなきに  読人知らず


 
        「もがな」という願望の連語を使った歌の一覧については 54番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/09 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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