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       題しらず 読人知らず  
757   
   秋ならで  置く白露は  寝ざめする  我が手枕の  しづくなりけり
          
     
  • 寝ざめ ・・・ 夜に目が覚めること
  • 手枕 ・・・ 腕枕
  
秋でないのに置く白露は、夜に目が覚めた自分の腕枕の涙の滴である、という歌。 563番の友則の「笹の葉に 置く霜よりも ひとり寝る」という歌や、188番の読人知らずの「ひとり寝る 床は草葉に 
あらねども」という歌などと似た歌である。 "寝ざめする" という言葉が目を引くが、この言葉は 
1002番の貫之の長歌でも「山郭公 鳴くごとに 誰も寝ざめて 唐錦」という部分でも使われている。

  また、次の読人知らずの歌と並べてみると、"秋ならで" (=秋でないのに)と言っているこの歌の特徴が浮かび上がってくる感じである。

 
545   
   夕されば  いとどひがたき  我が袖に    秋の露さへ   置きそはりつつ
     
        "秋ならで" とはじまる他の歌としては、231番に「秋ならで あふことかたき 女郎花」という藤原定方の歌があり、それ以外で 「〜ならで」という言葉が使われている歌としては次の友則の歌と貫之の歌がある。

 
38   
   君ならで   誰にか見せむ  梅の花  色をも香かをも  知る人ぞ知る
     
881   
   ふたつなき  ものと思ひしを  水底に  山の端ならで   いづる月影
     

( 2001/12/06 )   
(改 2004/01/16 )   
 
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