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       題しらず 読人知らず  
758   
   須磨の海人の  塩やき衣  をさをあらみ  まどほにあれや  君がきまさぬ
          
     
  • をさ ・・・ 織物を作る時に横糸を詰めるのに使用する道具
  • まどほ ・・・ 間隔が空いている様子(間遠)
  
塩を焼く時に海人が着る衣の目が粗いように、気持ちが密でないのであなたがいらっしゃらないのでしょうか、という歌。 "きまさぬ" は、「き+まさ+む」で、「来(く)」の連用形+補助動詞「ます」の未然形+打消しの助動詞「ず」の連体形。補助動詞「ます」は尊敬のニュアンスを表している。

  この歌では 「間が遠い」としているが 「間が近い」という譬えをしている歌に 506番の「葦垣の まぢかけれども あふよしのなき」という読人知らずの歌がある。また、この歌と同じ詠い出しを持つものとしては、次の読人知らずの歌がある。

 
708   
   須磨の海人の   塩やく煙  風をいたみ   思はぬ方に  たなびきにけり
     
        そして恋歌ではないが、須磨と塩ということでは 962番に在原行平の「わくらばに」の歌が見られ、同じ行平の次の 「ぬきを薄み」の春の歌は、横糸が薄いので、という意味で、言葉上この歌の "をさをあらみ" と響き合うようなところがある。

 
23   
   春の着る  霞の衣  ぬきを薄み   山風にこそ  乱るべらなれ
     
        「〜を〜み」というかたちを持つ歌の一覧は 497番の歌のページを参照。

 
( 2001/08/06 )   
(改 2004/02/08 )   
 
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