Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻二

       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 藤原興風  
131   
   声絶えず  鳴けやうぐひす  ひととせに  ふたたびとだに  来べき春かは
          
     
  • ひととせ ・・・ 一年
  
声を絶やすことなく鳴いてほしい、一年にもう再びは来るはずもない春だから、という歌。 "ふたたびとだに" は 「再び+と+だに」であり、副助詞「だに」は 「〜さえ/〜だけでも」というニュアンスを表す。 「とだに」というかたちでは次のような歌で使われている。 「だに」という言葉を使ったすべての歌の一覧については 48番の歌のページを参照。

 
     
131番    ふたたびとだに  来べき春かは  藤原興風
810番    なき名ぞとだに  言はましものを  伊勢
827番    流れてとだに  たのまれぬ身は  紀友則
914番    尋ねくればぞ  ありとだに聞く  藤原忠房


 
        "来べき" の「べき」は確信を表す助動詞「べし」の連体形。 「かは」は反語を表す。

  この歌は春歌下の終りから四番目に置かれていて、春の終りぎりぎりまでウグイスに鳴いて欲しいと言っているものである。古今和歌集の配列から言えば、128番の貫之の歌で 「はてはものうく 
なりぬべらなり」としたウグイスをまた持ち出しているので、少しくどい感じも受ける。

  鳥の名前を変えれば他の季節にも使えそうな歌で、実際 151番の読人知らずの歌に「声のかぎりは 我が宿に鳴け」というものがある。

 
( 2001/11/22 )   
(改 2004/02/10 )   
 
前歌    戻る    次歌