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これからは植えてまで見ようとは思いません、花薄が穂を出す秋は侘しくつらいものですから、という歌。御春有輔(みはるのありすけ)の 853番の歌の「君が植ゑし ひとむら薄」や、伊勢の 1006番の長歌の「花薄 君なき庭に 群れ立ちて」などを見ると、庭にススキを植えその穂を尾花として鑑賞していたのだろう。
この歌でひっかかる点は "植ゑてだに見じ" の 「だに」である。これは 「植ゑ(植うの連用形)+て(接続助詞)+だに+見(見るの未然形)+じ(打消の助動詞)」であり、意味としては 「植えることさえ(せず)、見もしまい」ということで 「植ゑじ・見じ」のつなぎの部分に 「だに」を置いたかたちであろう。基本的に副助詞「だに」は 「〜さえ/せめて〜だけでも」という気持ちを表すもので、古今和歌集の歌の中で他に動詞の連用形に付いているものとしては、847番の遍照の歌に「苔の袂よ 乾きだにせよ」というものがある。 「だに」という言葉を使った歌の一覧は 48番の歌のページを参照。
気持ち的には 「野に生えているススキをわざわざ庭に植えてあの人と鑑賞しようと思ったが、あの人がいない状態でこうして見ると、侘しい身の回りをさらに侘しくさせる効果にしかならなかった、そんなものを庭に持ち込んでもう植えようなどとは思うまい」という感じだろうか。 「わびし」という言葉を使った歌の一覧は 8番の歌のページを参照。
「穂に出づ」というのは隠れていたものが明らかになるということで、ここではススキの穂に掛けている。また 「秋」を 「飽き」に掛けて "穂にいづる秋" には 「相手の気持ちに飽きがきたことが明らかになる」という意味を込めているようである。 「穂に出づ」という表現を使った歌の一覧は 243番の歌のページを参照。
歌全体としては次の二つの歌のススキ・バージョンであると言えるだろう。
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