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       題しらず 紀貫之  
679   
   いそのかみ  ふるのなか道  なかなかに  見ずは恋しと  思はましやは
          
     
  • ふるのなか道 ・・・ 布留へ行く途中の道
  • なかなかに ・・・ 中途半端に
  
中途半端に姿を見なければ、恋しいと思うことはなかったのに、という歌で、次の友則の歌の 「いそのかみ」バージョンである。 「いそのかみ」という言葉を使った歌の一覧については 870番の歌のページを参照。

 
594   
   東ぢの  小夜の中山    なかなかに   なにしか人を  思ひそめけむ
     
          「布留」は現在の奈良県天理市布留町あたり。 "なか道" は 「中道」は(奈良から布留までの)途中の道ということ。上記の友則の 「小夜の中山」のように 「布留の中道」も一般的にそう呼ばれていたかどうかは不明。

  "思はましやは" は 「思は+まし+や+は」で 「思ふ」の未然形+反実仮想の助動詞「まし」の終止形+疑問の終助詞「や」+詠嘆の終助詞「は」。 「ましやは」は反語を表し、同じ使い方をしているものに 107番の「我うぐひすに おとらましやは」という歌がある。また、1042番の「思ひけむ 人をぞ共に 思はまし」という歌も、最後が 「なかりけりやは」と結ばれていてやはり詠嘆のニュアンスを持った反語である。 「やは」を使った歌の一覧については 106番の歌のページを参照。 「ましや」については 118番の歌のページを参照。

  歌の内容とは関係ないが、この歌の "ふるのなか道" という言葉は、 227番など古今和歌集に三首とられている 「布留今道(ふるのいまみち)」という人物の名前を思い出させる。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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