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       題しらず 読人知らず  
766   
   恋ふれども  あふ夜のなきは  忘れ草  夢ぢにさへや  おひしげるらむ
          
     
  • 忘れ草 ・・・ ヤブカンゾウ。ユリ科の多年草。
  
恋しく思っても逢える夜がないのは、夢路にさえ人を忘れるという忘れ草が生い茂っているのでしょうか、という歌。一つ前には次のような 「忘れ草」を使った読人知らずの歌が置かれていて、そこの 「種」がこの歌では 「生い茂って」見えるような効果となっている。 「あなたの撒いた忘れ草の種が」、という感じである。 「忘れ草」の歌の一覧については 801番の歌のページを参照。

 
765   
   忘れ草   種とらましを  あふことの  いとかくかたき  ものと知りせば
     
        また、 "あふ夜のなきは"と、"夢ぢにさへや" の 「さへ」からは、夢の外では逢えることをあきらめてしまったような感じがうかがえる。 「さへや」という言葉を使った歌の一覧は 328番の歌のページを参照。続く次の読人知らずの歌も似たような状況を詠っている。

 
767   
   夢にだに   あふことかたく  なりゆくは  我やいを寝ぬ  人や忘るる
     
        「恋ふれども」という言葉からは恋歌一にある 507番の「思ふとも 恋ふともあはむ ものなれや」という読人知らずの歌が、「あふ夜」という言葉からは 636番の「あふ人からの 秋の夜なれば」という躬恒の歌や 176番の「恋ひ恋ひて あふ夜は今宵 天の河」という七夕の歌が思い出される。

  「しげる」という言葉を使った歌の一覧は 550番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/02 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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