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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 藤原敏行  
558   
   恋わびて  うちぬるなかに  行きかよふ  夢のただぢは  うつつならなむ
          
     
  • うちぬる ・・・ 少しの間寝る
  • ただぢ ・・・ 真っ直ぐな道 (直路)
  
恋に思い悩んでふと寝てしまった、あの夢の中で通った真っ直ぐな道が現実のものであったらどれだけよいか、という歌。歌の感じとしては、小野小町の 553番の歌の「うたたねに 恋しき人を 見てしより」も近いものがあり、ふと見た夢の中では逢うことも容易だったのに、ということである。 "うちぬる" という言葉は、「うちも寝ななむ」として 632番の業平の歌にも出てくる。接頭語「うち」が使われている歌の一覧については 12番の歌のページを参照。

  また、"行きかよふ" は、「行き通ふ」で、「行き来する」という意味もあるが、ここでは 「通って行く」ということであろう。 「行きかふ(=行き交ふ)」とは別の言葉だが、168番の躬恒の歌に「夏と秋と 
行きかふ空の かよひぢは」と 「交ふ」と 「通ひ路」が近くで使われ、 862番の在原滋春の歌の「かりそめの 行きかひぢとぞ 思ひこし」は「行き交ひ路」だが、「ゆきかよひぢ」としている伝本もあるなど、その区別は微妙な場合もある。

  この歌では夢路は "ただぢ" であって、真っ直ぐな道であるが、その他に夢路の状況を詠った歌としては、次のような二つの歌がある。

 
574   
   夢ぢにも    露や置くらむ   夜もすがら  かよへる袖の  ひちてかわかぬ
     
766   
   恋ふれども  あふ夜のなきは  忘れ草  夢ぢにさへや    おひしげるらむ  
     
        「動詞+わぶ」というかたちが使われている歌の一覧は 152番の歌のページを、「うつつ」という言葉が使われている歌の一覧については 647番のページを参照。

  この歌から 「寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた」が十五首続く。

 
( 2001/10/02 )   
(改 2004/01/21 )   
 
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