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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 素性法師  
244   
   我のみや  あはれと思はむ  きりぎりす  鳴く夕影の  大和撫子
          
     
  • あはれ ・・・ いとおしい
  • きりぎりす ・・・  コオロギ
  
私だけがいとおしいと思うのだろうか、コオロギの鳴く夕影に咲くナデシコの花を、という歌。

  「や」は疑問の助詞で、この歌の場合、"我のみや" は「自分ばかりでなく、他の誰もがいとおしく思うだろうが、とりあえずここには自分しかいない」という反語を表す。同じ "我のみや" ではじまる歌としては、798番に読人知らずの「我のみや 世をうぐひすと なきわびむ」という歌があるが、そちらは 「花と散りなば」と仮定で終わっているので、反語ではなくそのまま疑問を表わしているようである。 「のみや」という言葉を使った歌の一覧は 55番の歌のページを参照。また、「あはれ」という言葉を使った歌の一覧は 939番の歌のページを参照。

  "鳴く夕影の" という言葉をはさんで 「きりぎりす」と 「大和撫子」が置かれている点がこの歌の特徴であり、「きりぎりすが−鳴く−夕影の−大和撫子」とスムーズに音とイメージをつないでいる。

  「きりぎりす」を詠った歌には次のような歌がある。

 
     
196番    きりぎりす いたくな鳴きそ  秋の夜の  藤原忠房
198番    秋萩も 色づきぬれば  きりぎりす  読人知らず
244番    我のみや あはれと思はむ  きりぎりす  素性法師
385番    もろともに なきてとどめよ  きりぎりす  藤原兼茂
432番    秋はきぬ いまやまがきの  きりぎりす  読人知らず
1020番    藤ばかま つづりさせてふ  きりぎりす鳴く  在原棟梁


 
        「まつ虫」の歌については 203番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/21 )   
(改 2004/03/07 )   
 
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