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       雲林院のみこの舎利会に山にのぼりてかへりけるに、さくらの花のもとにてよめる 僧正遍照  
394   
   山風に  桜吹きまき  乱れなむ  花のまぎれに  君とまるべく
          
        詞書は、雲林院親王(=仁明天皇の第七皇子である常康親王)が舎利会(=仏舎利供養の法会)のために比叡山に来た帰り、遍照が桜の下で詠んだもの、という意味。

  
できることなら桜が嵐のように散り巻いて欲しい、帰る道がわからなくなってあなたがここに留まってくれるほどに、という歌で、 "吹きまき" 、 "乱れ" と、山風に散る桜のイメージを大きく捉えている。その時一緒にいたと思われる幽仙法師の歌が続く 395番にあるが、その静かさと並べられると、よりダイナミックさが引き立つようである。

  「山風」および「嵐」を詠った歌を一覧にしてみると次の通り。 「野風」については 230番の歌のページを、「春風/秋風」については 85番の歌のページを、 「風吹く」という言葉を使った歌の一覧は 671番の歌のページを、 「吹く風」という言葉を使った歌の一覧は 99番の歌のページを参照。

 
     
23番    山風にこそ  乱るべらなれ  在原行平
91番    香をだにぬすめ  春の山風  良岑宗貞
249番    むべ山風  嵐と言ふらむ  文屋康秀
363番    山下風  花ぞ散りける  紀貫之
394番    山風  桜吹きまき 乱れなむ  僧正遍照
446番    山高み  つねにの 吹く里は  紀利貞
452番    月吹きかへせ  秋の山風  景式王
988番    あふ坂の  の風は 寒けれど  読人知らず
1003番    の風も  聞かざりき  壬生忠岑
1005番    ふるさとの  吉野の山の 山嵐  凡河内躬恒


 
        その他、この遍照の歌から連想されるものとしては、次の読人知らずの離別歌や、「桜花 散りかひくもれ」という 349番の業平の歌がある。

 
403   
   しひて行く  人をとどめむ    桜花   いづれを道と  惑ふまで散れ
     

( 2001/11/27 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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